【フルパッシブ矯正症例】12歳|前歯の気になる「すき間」を改善(上顎側切歯の矮小歯を伴う過蓋咬合症例)
▼目次

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | 非抜歯・マルチブラケット装置・コンポジット レジン修復 |
| 年齢 | 12歳7か月(装置装着時) |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 1年9か月 |
| 費用(税込) | 75万円 |
| リスク・副作用 | ・歯根吸収 ・むし歯 ・歯肉腫脹 |
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
今回の患者さんは、12歳7か月の女性です。前歯の間に目立つ「すき間」があること、そして2番目の歯が周りの歯に比べて明らかに小さいことを気にされて来院されました。
中学生という多感な時期でもあり、見た目に関するお悩みを解消したいというご希望がありました。 検査の結果、歯のサイズや噛み合わせの深さにも課題が見つかり、それらを総合的に改善する方針で治療を開始することとなりました。
2. ご来院時の状態と診断
患者さんのお口の中を拝見したところ、以下のような状態が確認されました。
①歯列の状態
上顎側切歯(上の前歯の中心から数えて2番目の歯)が、生まれつき通常よりも小さい「矮小歯(わいしょうし)」という形をしています。この歯が小さいために、前歯の間にスペースができてしまい、いわゆる「すきっ歯」の状態になっています。
②咬み合わせの状態
上の前歯が下の前歯を深く覆いすぎている「過蓋咬合(かがいこうごう)」の状態でした。また、上の前歯が前方へ突き出している「上顎前突」の傾向も認められました。
③骨格・軟組織の状態
骨格的には、上下のあごのバランスに大きな問題はありませんでした。ただし、上唇の裏側と歯ぐきをつないでいるスジ(上唇小帯)が、通常よりも高い位置についている状態でした。このスジの位置の影響で、前歯の間にすき間ができやすくなっている可能性があると診断されました。
歯のサイズが平均的な大きさと比較して著しく小さい歯のことです。上顎の側切歯(中心から数えて2番目の歯)によく見られる形態異常で、歯の形が円錐状になることもあります。歯と顎のサイズのバランスが崩れるため、歯列にすき間が生じる原因となります。
上下の歯を噛み合わせたときに、上の前歯が下の前歯を深く覆い隠してしまう状態のことです。ディープバイトとも呼ばれます。下の前歯が見えなくなるほど深い場合もあり、将来的に歯ぐきを傷つけたり、顎関節に負担をかけたりするリスクがあります。


3. 治療計画
本症例では、矯正治療だけでなく一般歯科治療を組み合わせた包括的な計画を立てました。
①アンテリアレシオの算出
上顎の矮小歯に対して、上下の前歯の幅径を計測しました。「アンテリアレシオ」と呼ばれる指標を用いて、上下の歯が理想的に咬み合うための歯冠幅径を算出しました。
②治療ステップの策定
まずは、歯の動きを阻害する可能性がある上唇小帯の切除を行い、次に矮小歯を適切な大きさに復元するコンポジットレジン修復を計画しました。その上で、マルチブラケット装置を用いた全顎的な矯正治療へと移行します。
③当院の強み
矯正専門の医院では、むし歯治療や外科処置を他院に依頼するケースも少なくありません。しかし、当院では上唇小帯切除術やコンポジットレジン修復といった一般歯科・口腔外科処置まで一貫して対応可能です。患者さんの負担を軽減し、スムーズな治療進行につながるよう努めています。
4. 治療時
治療は以下の流れで進めました。
①上唇小帯切除術
前歯のすき間を広げる原因の一つと考えられる、上唇の裏側と歯ぐきをつなぐスジ(上唇小帯)に対して、切除術を行いました。小帯の付着位置が高い場合、前歯のすき間が閉じにくくなることがあるため、矯正治療をスムーズに進める目的で事前に処置を行っています。
②装置装着
ワイヤー装置の装着を行いました。後日、上顎側切歯(上の前歯の中心から数えて2番目の歯)をコンポジットレジンで修復する予定でしたので、意図的に上顎前歯部の装着を遅らせました。

③修復治療
上顎側切歯(上の前歯の中心から数えて2番目の歯)をコンポジットレジンで修復しました。すき間を閉じる前に、すき間を閉じる前に歯の大きさを整えておくことで、最終的な見た目や噛み合わせのバランスが取りやすくなります。
④下顎ブラケットの「T21-Z」への着け替え
患者さんは咬み合わせが深く、咬む力も強かったため、下顎前歯の装置が外れやすいリスクがありました。そのため、治療途中から下顎に新型のジルコニア製ブラケット「T21-Z」を使用し、装置の安定性に配慮しました。「T21-Z」は旧来の「T21-C」と比較するとブラケットサイズが大きく小さくなったことが特徴です。当院は開発に関与していたこともあり、早めに手に入れることができました。

⑤咬合挙上の実施
過蓋咬合(咬み合わせが深い状態)を改善するために、上下の咬み合わせの高さを一時的に上げる「咬合挙上」を行いました。治療の途中で噛み合わせが浅くなる段階を経ながら、適切な位置へと整えていきました。
⑥仕上げと装置除去
奥歯の前後的なズレ(Ⅱ級関係)を整え、しっかりと咬み合う状態になったことを確認し、約1年9か月で装置を取り外しました。
歯科用のプラスチック樹脂(コンポジットレジン)を用いて、歯の欠けた部分や形態を補う治療法です。歯の色に近い素材を直接盛り付けて固めるため、1日の処置で見た目を自然に整えることが期待できます。
5. 治療後・予後

治療の結果、患者さんが最も気にされていた前歯のすき間と矮小歯の形態が改善しました。歯科医学的な課題であった過蓋咬合や臼歯の咬み合わせのズレも解消され、機能的な咬合の改善が認められました。
治療によってすき間を閉じること自体は比較的容易である一方で、その状態を保定期間中に維持することが難しいとされています。そのため、治療後は閉鎖したすき間が後戻りしないよう、リテーナー(保定装置)を用いて慎重に経過を観察しています。
また、矮小歯の修復物と歯ぐきが接している部分は汚れがたまりやすいため、清掃性を高める目的でブラッシング指導を継続しています。今後は歯ぐきの状態を注視し、必要に応じてセラミックによるラミネートベニア治療も検討していきます。
当院では、矯正治療と一般歯科処置を組み合わせることで、お口全体の審美性と機能性を追求しています。歯の形やすき間でお悩みの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
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監修 余語歯科 矯正歯科 院長 余語良章
2001年 千種小学校 卒
2004年 今池中学校 卒
2007年 東海高等学校 卒
2013年 東京医科歯科大学歯学部 卒
2014年 愛知学院大学歯学部附属病院研修医 修了
2014年 東京医科歯科大学部分床義歯補綴学分野 入局
2014年 高円寺オズ歯科室 勤務 補綴、歯周病を中心に一般歯科全般を学ぶ
2016年 クローヴァ歯科クリニック 勤務 小児歯科認定専門医のもと小児治療を学ぶ
2017年 アップル歯列矯正歯科 勤務 舌側矯正認定医のもと舌側矯正を中心に矯正を学ぶ
2019年 田村矯正歯科 常勤 矯正器具開発なども行う臨床指導医のもと矯正について詳細に学ぶ
2022年1月 余語歯科 勤務
2023年11月 余語歯科 矯正歯科 移転開業、院長就任