【フルパッシブ矯正症例】30代女性「出っ歯・再治療のご相談」上顎抜歯を伴うワイヤー矯正

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | 上顎の抜歯を伴うワイヤー矯正治療 |
| 年齢 | 30代 |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 1年10カ月 |
| 費用(税込) | 1,045,000円 |
| リスク・副作用 | ・歯根吸収 ・歯髄の失活 |
▼目次
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
患者さんは、「前歯が出ている」「以前に矯正治療を受けたものの、後戻りしてしまった」というお悩みでご来院されました。
中学生の頃に一度矯正治療を受けられていましたが、治療後に歯並びが後戻りし、前歯が咬み合わない状態になってしまったとのことです。そのため、「もう一度矯正治療を受けても改善が期待できるのだろうか」と不安を抱えながら、治療先を探されていました。
SNSでフルパッシブ矯正を知り、治療内容に興味を持たれたことと、ご自宅から通いやすいことが決め手となり、ご来院いただきました。
2. ご来院時の状態と診断
お口の中やレントゲンなどの検査を行った結果、上の前歯が前方に突出した「上顎前突(出っ歯)」に加え、前歯が噛み合わない「開咬」の状態が認められました。そのため、食べ物を前歯で咬み切りにくく、見た目だけでなく発音にも影響が出やすい状態でした。
また、上下の奥歯の咬み合わせにもずれがあり、下顎が上顎よりも後ろに位置しているため、出っ歯が目立ちやすい噛み合わせとなっていました。さらに、下の前歯には歯が重なり合う「叢生」がみられ、歯並び全体のバランスも崩れていました。
お顔立ちは比較的まっすぐな横顔でしたが、口呼吸の傾向や、舌癖(発音時に舌を前に押し出す癖)が認められました。このような口腔機能の癖は、歯並びや噛み合わせを乱す原因となるだけでなく、矯正治療後の後戻りにつながることもあります。
そのため、本症例では歯並びを整えるだけでなく、咬み合わせやお口の機能まで考慮した治療計画を立てることが重要であると診断いたしました。


3. 治療計画
過去に矯正治療を受けられた方の再矯正では、歯並びを整えるだけでなく、後戻りの原因まで改善することが重要です。本症例では、歯並びや咬み合わせに加え、お口の機能も評価し、治療後も長期的に安定した状態を維持できるよう、以下の治療計画を立てました。
①抜歯によるスペースの確保
本症例は、抜歯を行うかどうか判断が難しいケースでした。しかし、過去に非抜歯で矯正治療を受けた後、前歯が咬み合わない開咬へと後戻りしていることを踏まえ、今回は上の左右4番目の歯を抜歯し、歯を移動させるためのスペースを確保する方針としました。
②後戻りのリスク軽減を目的とした機能改善
検査では、舌癖(舌を前に押し出す癖)が認められ、後戻りの原因の一つと考えられました。そのため、矯正治療を開始する前からMFT(口腔筋機能療法)を取り入れ、あわせて上の前歯の裏側にタングスパイクを装着することで、舌の癖の改善を図り、治療後も安定した歯並びを維持できるよう計画しました。
③アンカースクリューを活用した矯正治療
上顎の奥歯付近にはアンカースクリューを埋入し、固定源として活用します。矯正装置で歯並びを整えながら犬歯を後方へ移動させ、その後、前歯を後方へ移動することで、出っ歯の改善と咬み合わせの調整を進める計画としました。
④治療の仕上げと保定
治療の終盤には、一本一本の歯の位置や咬み合わせを細かく調整し、必要に応じて下の前歯のディスキング(幅をわずかに整える処置)を行います。治療終了後は矯正装置を取り外し、整えた歯並びを維持するためにリテーナー(保定装置)を使用し、後戻りのリスク軽減を目指します。
MFT(口腔筋機能療法)とは、舌の正しい位置や動かし方、正しい飲み込み方などを身につけるためのトレーニングです。お口の周りの筋肉のバランスを整えることで、歯並びの悪化や矯正治療後の後戻りのリスク軽減が期待できます。
タングスパイクとは、上の前歯の裏側に装着する小さな矯正装置です。舌が前歯を押す癖を改善し、舌を正しい位置へ導く役割があります。MFTと併用することで、開咬や矯正治療後の後戻りのリスク軽減が期待できます。
アンカースクリューとは、矯正治療の際に歯ぐきの骨へ一時的に埋め込むチタン製の小さなネジです。このネジを固定源として歯を動かすことで、症例に応じた歯の移動が可能となる場合があります。 治療終了後は取り外すため、体内に残ることはありません。
歯と歯の間を専用の器具でわずかに削り、歯を動かすためのスペースを作る処置のことです。適切な範囲で行うため、歯の健康への影響は少ないと考えられています。
4. 治療
実際の治療は、以下の流れで進めました。
①抜歯・むし歯治療と矯正装置の装着
矯正治療を開始する前に、上の左右4番目の歯を抜歯し、むし歯の治療を行いました。当院では、矯正治療だけでなく一般歯科治療にも対応しているため、むし歯の治療から矯正治療まで一貫した診療体制で対応しています。
②犬歯の移動と前歯のコントロール
矯正装置を装着した後は、上顎に埋入したアンカースクリューを固定源として、犬歯を後方へ移動させる治療を開始しました。犬歯の移動と並行して前歯を適切な位置へコントロールしながら歯を動かすことで、治療の早い段階から前歯の隙間に変化がみられるようになりました。

③前歯の咬み合わせの改善
犬歯の移動が進むにつれて、前歯もしっかりと咬み合う状態へ近づいていきました。開咬の症例では、できるだけ早い段階で前歯の咬み合わせを回復させ、前歯で食べ物を咬み切る感覚を取り戻していただくことが、その後の安定した噛み合わせにつながると考えています。

④抜歯したスペースを閉じ、咬み合わせを調整
前歯や犬歯の位置が整った後は、上顎の抜歯したスペースを閉じる治療を進めました。また、日常生活でも前歯を積極的に使っていただくようお伝えし、お口の機能の改善も目指しました。
下顎は抜歯を行わない方針としたため、必要に応じてディスキングを行い、歯を動かすためのスペースを確保しながら上下の歯並びと咬み合わせのバランスを整えました。
⑤咬み合わせの仕上げ
治療前は前歯で咬めない状態が続いていた影響で、奥歯がすり減っており、理想的な咬み合わせをつくることが難しい状態でした。そのため、必要に応じて装置を付け直すなど、一つひとつの歯の位置や咬み合わせを細かく調整しました。

5. 治療後・予後


治療後は咬み合わせや歯並びに変化がみられました。過去の矯正治療で後戻りを経験されていたことから、再治療に対して不安を抱かれていましたが、治療を重ねるなかで不安も軽減し、前向きに治療へ取り組んでいただくことができました。
治療中には上の前歯に変色が認められたため、検査を行いました。その結果、変色はしていますが歯の神経は正常に機能していることを確認しました。現在は変色歯に対してウォーキングブリーチを行っており、全顎的にもホワイトニングを行い、色の差を目立たなくしています。本症例を通じて、治療前だけでなく治療中もお口の状態を丁寧に確認しながら進めることの重要性を改めて認識しました。
開咬は、舌癖などの口腔機能に問題が残っている場合、後戻りが生じやすい傾向があります。そのため、治療後もリテーナー(保定装置)の使用を継続していただくとともに、舌の使い方や口腔機能の状態を確認しながら、長期的に経過を観察していく予定です。
当院では、矯正治療だけでなく一般歯科治療にも対応し、患者さんのお口の健康を総合的にサポートしています。歯並びや咬み合わせ、過去の矯正治療後の後戻りなどでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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監修 余語歯科 矯正歯科 院長 余語良章
2001年 千種小学校 卒
2004年 今池中学校 卒
2007年 東海高等学校 卒
2013年 東京医科歯科大学歯学部 卒
2014年 愛知学院大学歯学部附属病院研修医 修了
2014年 東京医科歯科大学部分床義歯補綴学分野 入局
2014年 高円寺オズ歯科室 勤務 補綴、歯周病を中心に一般歯科全般を学ぶ
2016年 クローヴァ歯科クリニック 勤務 小児歯科認定専門医のもと小児治療を学ぶ
2017年 アップル歯列矯正歯科 勤務 舌側矯正認定医のもと舌側矯正を中心に矯正を学ぶ
2019年 田村矯正歯科 常勤 矯正器具開発なども行う臨床指導医のもと矯正について詳細に学ぶ
2022年1月 余語歯科 勤務
2023年11月 余語歯科 矯正歯科 移転開業、院長就任